「聖石傳説」とは?

まず第一に、あんたは誰?

 このサイトを作っている者は「しいな りお」という一個人です。
実は2000年1月22日(つまり「聖石傳説」の公開日)にとある用件で台湾に行ったのですが、そのとき映画館で「聖石傳説」のポスターを見かけ『人形劇のようだけど…いったいどんなのだろう?』と思い翌日見に行ったのですが、もう目からウロコがボロボロ状態で口をアングリ開けたまま見るハメになってしまいました。とにかく衝撃的でした…。映像のすばらしさ、人形のすばらしさ、そしてその情感あふれる演技、さらにダイナミックで面白いドラマ!私は北京語は少ししか分からず、ましてや台湾語はまったく分かりません。しかもこの作品は北京語字幕だけで、英語字幕も付かずに上映されたので話しているセリフは3割も読みとれてないと思うのですが、そのドラマはじゅうぶんに伝わってきました。
日本に戻るや友人を中心に吹聴してまわったのですが、いかんせん資料はいろいろ買ってきたものの肝心の映画が無いのでどうしても感動が伝え切れません。ですが7月にはついにビデオ・ビデオCD・DVDが発売になりました。なんとかして手に入れようとしたのですが、北京語もロクに話せぬ辛さと通販サイトを知らないことでままなりませんでした。そんな折りに、東京国際ファンタスティック映画祭で上映されるのを知り「これはゼヒ日本中に薦めねば!」となったわけです。
そこでやはり「買いに行くべし!」と決意。9月末にもう一度台湾に飛び、DVDと他の資料を買いあさってきました。(実はこの前にはすでに海外まで送ってくれる通販サイトも見つけていたのですが、通販はいつでもできるからやはり直接行こうということで渡航とあいなりました。)
そんなこんなで資料を揃えてこのサイトを公開しているわけです。このサイトは「聖石傳説」が全国公開されるように応援するつもりですが、まあ最低でもDVD発売やTV放映に落ち着いたとしても応援し続けるつもりです。そしていつかTVで「霹靂英雄」達の活躍が見られる事を願って!!


※とある用件:映画「庫洛魔法使(邦題:カードキャプターさくら)」を見に行った★
そもそも布袋戯って何?

 布袋戯(私は日本語発音で「ほていぎ」と読んでますが、正しくは「プータイシー」と発音してますね)とは、台湾の伝統芸能のひとつでいわゆる人形劇です。人形劇といってもいろいろありますが、この場合は下から手を入れて動かすタイプの操り人形になります。指人形などと違って内部でのワイヤー操作などで目や口、指なども動かして細かな動きをつけられるのが特徴です。(「ひょっこりひょうたん島」や「サンダーバード」で使われている人形は外からワイヤーで支えたり引っ張ったりするタイプです。「三国志」などの人形がいちばん近いかと思われます。)
マンガやアニメがお好きな方ならば「人形草紙あやつり左近」に登場する文楽人形『右近』が人形のイメージとしては最適でしょう。キャラがカッコいいところも右近と合ってますし☆

 ただ「聖石傳説」は、その人形劇のイメージを一新しています。正直なところ「伝統芸能」の枠など完璧にブッ壊しているのは間違いありません。いや、その片鱗はTV作品である「霹靂」シリーズにすでに見え隠れしているのですが「聖石傳説」はそれを最大限にまで昇華させていると言っても過言ではないと思います。
聖石傳説って何かのシリーズなの?

 「聖石傳説」自体はそれ単独で完結しているお話です。なので、それまでに作られている霹靂シリーズを見ていなくてもじゅうぶんに楽しむことができます。私なんてどんなものをやるのか分からないままに劇場に見に行って、しかも台湾語発音・北京語字幕であるにも関わらず楽しむことができたのですから。
しかし霹靂シリーズと関係がないわけではなく、実際に主人公達を含め霹靂シリーズで登場するキャラクターが多数「聖石傳説」にも登場しています。そのため、霹靂シリーズを知っておいた方が楽しみが増えることは間違いありません。ただ、霹靂で有名なキャラクターなどが『顔見せ』程度で姿を消しているシーンも見受けられますが、あれは映画として登場させたというよりTVのファンに向けた単なるサービスと見た方がいいでしょうね。
霹靂って聞いた事あるけどいったい何?

 「霹靂」シリーズとしてますが、実は正確なシリーズ名は知りません。布袋戯のTVシリーズは昔からやられていたのですが、ある時期(16年ほど前)から「霹靂」をタイトルに冠するシリーズが始まり、基本的に同じ世界観で同じキャラクターが登場するものとなったようです。(このへんに詳しい方がおられたらご教授願います。)
霹靂シリーズの特徴はそのキャラクターのユニークさとかっこよさ、そして聖魔や善悪の戦いのダイナミックさなどがあります。中でもキャラクター同士の剣での戦いはシリーズを追う毎に派手になり、「聖石傳説」ではCGも交えてとてつもない完成度で見せまくってくれます。
なお「霹靂」ですが、私は思いきり日本語発音で「へきれき」と読んでます(笑)
で、どのへんが面白いの?

 まあ他の項でも書いているのですが、キャラクターのユニークさと多様な人間関係(人間でない者も含む)が織りなすドラマ、そして人形劇を突き抜けたところにある動きの妙がいちばんでしょうね。特に日本の時代劇でもそうなんですが剣を使っての戦闘シーンは見どころです。それにただの剣劇だけではなく術を使った魔法のような攻撃も加わりますので、あたかもアニメやTVゲームのような迫力と演出で魅せまくってくれます。
剣での戦いもただ剣と剣を交えてチャンバラをやるだけでは済みません。抜く手を見せないほど高速に剣を繰り出せば、相手はそれをひらりとかわし、宙を舞ったかと思えば稲妻のように剣先が相手に飛びかかり、相手は同じく宙をクルクルと回って剣の切っ先を足で払いのける。そんなそれこそアニメでしかやらないようなバトルを人形が繰り広げます。「聖石傳説」では演出にCGも使われていますが、基本的に戦いが人形同士であることには変わりありません。いったいどうやって操作しているのか分からないほどなのですが、そこはそれ伝統からなる技なのでしょう。
 また、戦いだけでなくドラマの中にある叙情性も見逃せません。TVの方はどこまで魅せてくれているのかはっきりとは分かっていないのですが、少なくとも「聖石傳説」においては人形の出来の細かさと相まってその動きの繊細さ、足元から指の先までこだわった体全体が現す豊かな表情にドキリとさせられます。この表現のうまさは下手なタレントドラマあたりを見るよりもよっぽど感じさせてくれます。
 それから、声についても特徴的です。というのは、「聖石傳説」ではたったひとり(黄文擇)がすべての声をあてているのです。もちろん男も女も人間以外も全部です。それはある意味滑稽でもあるのですが、聞いているとだんだんとその味に染まってきてしまいます。
なお台湾語版ではひとりが声をあてていますが、北京語版や英語版では複数の人があてているそうです。私は台湾語以外は見ていないので完成しているのかは分かりませんが。(発売している台湾版DVDでも台湾語発音・北京語字幕だけになっています。残念ながら複数言語や複数字幕は入っていません。)

 「聖石傳説」は本来人間がやっている映画をそのまま人形に置き換えただけといっても過言ではありません。いや、人形であるからこそ表現し得た部分も多いと思われます。そしてそこには今まで人が演じてきたからこそ見落としていた事がたくさん含まれているのです。
そんなに人気あるのお?

 それはもう!布袋戯自体が伝統芸だからではないはずですが、なんといっても数十年から連綿とTV放映が続いているのがその証です。しかも初めて知った時には驚いたのですが台湾では衛星放送の一局に「霹靂衛星電視台」というところがあり、そこでは隅から隅まで「霹靂」シリーズを放送しているのです☆
またシリーズのファンクラブもいたるところにあるようですが、「聖石傳説」の上映でまた再燃したらしいです。
それから、最近では香港でも「霹靂」シリーズの放映が始まっています。残念ながらこれまで日本には入ってきていません。でも「聖石傳説」を期に、輸入されるようになれば…と考えています。
子供向けなんでしょ?

 とんでもない!「聖石傳説」は台湾では「制限級(18歳未満鑑賞禁止)」で上映されました。
といっても、随所に人形のHシーンが登場して…とかじゃありません。台湾ではHシーンのみならず、暴力シーンなどについても制限が設けられており「聖石傳説」ではお話中にあるド迫力の戦闘シーンなどがこれに該当するために「制限級」になっていたようです。日本では暴力やグロテスクな表現は認められてるため(違うか(笑))、東京国際ファンタスティック映画祭においても特に年齢制限などはもうけられていません。
しかし18禁で公開しているにも関わらず台湾国内で大ヒットを飛ばしたのです。これは一部の濃いファンやオタクだけが見に行ってなしえることではありません。成人層の広い支持があったと見た方がよいでしょう。
人形劇なら安く作れそうだけど…

 いや実際にTV版はどれくらいの予算で作られているのかは分かりません。しかし「聖石傳説」は違います。 制作期間3年、制作費12億円と、ただ期間や金額だけ聞いても「よくある話」と思えてしまうのですが、映画を見ればなぜだか一発で分かります。この作品は3年と12億円かけたのではなく、3年と12億円かかってしまったのです☆
 TVシリーズの人形は正直言って(「聖石傳説」に比べたらの話ですが)それほどでもありません。ライトの光で顔がテカッたりしますし、指だってくっついていて角が落ちてるとはいえ四角いです。動きや画面の映し方もやはり動かしやすい横一線が多く、特撮も簡単なビデオ合成になっています。しかしそれはあくまで子細に見た場合のもので、ドラマの中ではほとんど意識しません。ドラマとして見た場合、TVシリーズでもその活劇のダイナミックさとキャラクターのユニークさに思わず引き込まれそうになります。正直なところ言葉が分からないため面白さはカケラもつかめていないのでしょうが、それでも見続けたい魅力にあふれています。
 しかし「聖石傳説」は映像に関してはそれらTVシリーズを完全に無視して作られました。人形は関節から指先にいたるまで美しくまた微細に作られています。動きもTVとは比べものにならないほど柔軟で自然で、なおかつ叙情に満ちあふれています。顔の表情にしても「これが人形とは思えない」ほどに豊かです。そして立ち回りのダイナミックさはTVシリーズのそれを遙かに凌駕して、へたな人間の格闘シーンを見るよりもワクワクドキドキ感じさせてくれます。
また人形の出来だけにとどまらずその絵づくりに際してもとんでもない事を平気でやっています。下から操るタイプの人形なんですから操る人が見えないように普通なら横一線にして下を隠した方がやりやすいはずですが、この映画では人間が演じている映画とまったく同じにカメラアングルも変わり、俯瞰やななめからの構図もいくらでも出てきます。ものすごいのは同じシーンで上から見たカットや横から見たカットが混在していることです。人が操るところが見えてはいけないので当然分けて撮ったのだと思われますが、その努力と苦労たるや想像に難くないです。
そして建物や洞窟などの自然造形、アクションに伴うCG合成など、「聖石傳説」はすごさを語るに枚挙に暇がありません。とにかく何もかもが常識はずれで、これまでに見たことがない映像を見せてくれます。よくぞたった3年で作りあげたという方が正しいような気がするほどです。

戻る